ジョブ型で仕事が会社から分離される場合はどうなるのか?

それでは、勝手ながら小職が代わって人事実務上でわかる範囲でお答えします。〜ただ、ここはニルバーナなどでは全然なく、コロナ第三波の感染爆発に日々慄くシリアスな常世でしょうか…。

グローバル企業では事業再編や合併統合に伴い、特定の部門や機能(ミクロで見れば各人のジョブ)がある会社から離れ、ある会社に移るケースがよくあります。その場合、当該労働者の地位及び移籍先における労働条件がどうなるか?ですが、それは両社(当事者)間のMaster Service Agreement (基本契約)に基づいて決定されます。

よく見るケースは、移籍先から提示されるオファー(給与や福利厚生などの労働条件全般)は移籍前のレベルを下回るものであってはならない(すなわち労働者の待遇は同等又はそれ以上)というものです。会社間で基本給や賞与や手当や福利厚生などの内容や金額は異なっても、全部引っ括めた年間賃金で比べて労働者に不利益にならぬよう配慮することが円滑な事業譲渡を進めるポイントです。

メンバーシップ型にどっぷり浸かった日本ではなかなか理解出来ないかもしれませんが、労働者の賃金はどの会社でいかに長く働くかという点ではなく、どの仕事をどのレベルで現在しているかという点で労働市場に基づいて決定されます。全く同じジョブであれば移籍前後で雇用主が変わっても賃金は上がりも下りもしません。なぜなら、社員の待遇を下げるロジック(動機)も殊更に上げるロジック(合理的理由)もありませんから…。

さらには、ジョブ型であれメンバーシップ型であれ、民間企業がどの部門や職種の仕事を自社の内部に残し、どの仕事を組織の外部に出すかは戦略的な経営判断です。仮にそれが「公に認められない」となると自由な企業活動に支障をきたす恐れがありますが、それがあるとすれば健全で公正な競争を確保する競争法(独占禁止法)の観点からでしょうかね。

総じて、こういった企業再編時のコンプライアンスは、メンバーシップ型の日系企業よりもジョブ型の欧米企業の方がしっかりしていると思います。

以上、ジョブ型の誤解を解くためにも皆さんのご参考になれば幸いです。

投稿: ある外資系人事マン | 2021年1月 3日 (日) 11時16分

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