用語解説「ジョブ型」とは

日経新聞の「ジョブ型」解説ですが、むしろ後半の方がおかしいですね。曰く、「… (中略)日本では勤続年数に応じて昇給する「年功型」が多数派だが、成果に基づき評価されるジョブ型では年功概念は否定される。同期入社でも給与格差が拡大する可能性が高い。ジョブ型が一般的な欧米では企業内で特定のジョブがなくなれば、雇用もなくなるケースが多い。成果と評価の結びつきを維持しつつ雇用を保障する「日本版ジョブ型」の在り方が模索されている。」

おそらく、意地悪な意図はないのでしょう。日経新聞としてはたぶん精一杯、わかる範囲で描いているだけかと…。以下、あくまでご参考まで〜小職では「ジョブ型」の解説は次のようになります。

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日本と韓国の多くの企業で一般的ないわゆる「正社員」(職務無限定の無期雇用社員)は、世界的には極めてユニークな雇用形態である。それを「メンバーシップ型」と名付けるとき、そうではない世界標準の雇用形態のことを対比して「ジョブ型」と呼ぶ。

メンバーシップ型雇用では、多くの同質かつ均一な労働者が学校卒業直後に「新卒」で企業に入社し、その後中高年まで長期間勤め上げることを念頭に、会社主導の広範かつ柔軟な職務変更(人事異動)、年功昇進/賃金、定年退職と手厚い退職金(賃金の後払い)等によって中長期的な社員の労務貢献に報いることを特徴とする。

一方で、世界(ジョブ型雇用)では〜そのような特殊なメンバーシップ型が前提とする労働者の同質性や均一性及び新卒採用と長期雇用という諸条件は見出されないため、雇用及び人材マネジメントの仕組みは必然、本来的なもの〜各人の職務内容(ジョブディスクリプション)に基づくものとなる。すなわち採用はポジション別に行われ、賃金は職務別(ジョブレベル)に応じて設定され、処遇は社員の短期的な貢献に都度報いることを特徴とする。

すると、日本では第二次世界大戦以降すでに半世紀以上にわたってほぼ全ての会社でメンバーシップ型雇用を唯一のデフォルトとしてきたため、残念ながら、一般の人たちがそうではない雇用形態(すなわちジョブ型)について想像することすら困難を極める状況となっており、2021年初めの現時点では、そうした結果、ほぼ全ての企業がこの誤った現状認識のもと会社側にとって大変都合のよい手法で「日本版ジョブ型」の導入という全く訳の分からない制度変更を試みるという異例の事態が生じている。

投稿: ある外資系人事マン | 2021年1月 1日 (金) 20時20分