JILPTマンスリーレポート「管理職特集」(2020/12)書評

いくつかの小論も含め、全体的には大変興味深そうな冊子ですね…。ただ、小職からは(現時点でリンクで全文が読める)巻頭の「提言」に関してだけ、少々辛口のコメントを…。

某教授の同小論に曰く、「今月の特集は管理職なので,そもそも管理職の配置がどの様に決められるかを考えたい。管見の限りでは,管理職の決め方は,次の 3 つである。まず第 1 は,言わずもがなであるが,人事権による任用である。これは企業や官庁その他多くの組織で行われている。もちろん,人事権を行使するのは社長,人事部,ライン管理職と様々であり,その前提となるのも年齢,等級,人事考課, ネポティズムと千差万別である。第 2 点は,社内公募である。ただし人事一般であればいざ知らず,社外からの中途採用を除けば管理職を公募したという例は寡聞にして聞かない。さらに第 3 点 は,選挙による管理職の選出。例えば大学は学部長を学部専任教員の選挙によって決めている。(中略)それでは,管理職が社内公募の対象にならないのはなぜか? それは管理職が「やりたい人に任せる」のではなく「やってほしい人に任せる」 仕事、つまり組織の論理が個人の論理よりも優先される仕事だからである。勘違い君が公募で手を挙げ,成り行きで配置されてしまうと,部署の売り上げや成員の管理に多大な損失を及ぼすのは火を見るよりも明らかであり,それ故多くの人間が関与する人事権による配置が望ましい。」

うーん、だいぶ世間&時代とズレていらっしゃるかと。真面目な話、(第三の「選挙」はさておき…)第一の「任用」と第二の「社内公募」は適切な場合分け区分ではありません。あくまで管理職の候補者募集の「サーチ手段」として「公募の有無」「(公募する場合の)社内外の開放性」があるだけで「任用」はどんな場合にせよ必要、組織として省くことはまずありませんから。「勘違い君が手を挙げ、成り行きで配置されてしまうと…」のくだりは、どこか昭和のおふざけ漫画を見ているようで全くリアリティがありません。

ということで、令和時代のJILPTさんのマンスリーレポートの「提言」としてあまりにお粗末、場違いと言わざるを得ませんね。全くもってNGです、少なくとも現役企業人事屋の私の視点では。あるいはこの提言の位置付けはこのくらいの「味付け」でOKなのでしょうか… 全くそうは思いませんが。

投稿: ある外資系人事マン | 2020年11月26日 (木) 22時03分